第1章 エンゲージ

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 高速で降下する彼我不明機。飛行速度も600ノット(約1011キロ)を超えた。 『ティガーフライト、超音速で追尾しろ』 『ティガー01、ラジャー』 「ツー!」  スロットルレバーを一杯に押し込んだ。刹那、身体がシートに押し付けられる。  2基のRD-33ターボファンエンジンが赤い火を噴き、軽々と加速していく。マッハ計が1.0を越え、瞬く間に1.1へ。  キャノピー越しに響く風切り音とエンジン音が、コックピットを支配する。  俺達は戦闘機パイロット。金属製の翼が付いた棺を駆って、祖国でもないこの国を守る。俺達の雇用主、レイヴェン公国。  古の時代より、周辺国の脅威に脅かされてきた、この国は東方のリュクシア連邦共和国、西方のアルフィリオ連邦、南方のシャルビア帝国といった、3方向を敵国に囲まれている状況が既に300年続いている。防空上、ここまで厄介な状況に置かれている国も、イスラエルか日本ぐらいだ。故に、この国は防空能力に力を入れてきた。だが、歯止めの効かない人員不足、海外へと流出する自国民・・・戦闘機パイロットの不足が深刻な問題となった。他国よりも圧倒的に低いハードルで志願者を招き入れ、短期間で操縦技術を叩き込むか、戦闘機操縦経験者を招き入れる。傭兵による国防。それが答えだった。国内外からの反発は当然有ったものの、人材不足に喘ぐ空軍と、戦闘機操縦士の道を絶たれた者達や、実戦を求めた者により、この制度は歓迎された。相棒も、その1人である。
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