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セミの声とともに蒸し暑い風がスタンドの応援席にやってきた。青い空、白い雲。野球場の応援席。
夏が来た。
平成最後の夏そして、高校最後の夏。まとわりつく暑さとともにこの応援席にいる。もっとも、暑苦しいのは後ろのチューバの鈴木君だが。
一応男子の彼はそういった。言っておくけどときめくような男子ではない。
「すげーな、相手校。スーザフォンだよ、何台ある」
対戦校は、運悪くというか、ここまで来たのが運が良かったのか、いろいろと強い高校なのだる吹奏楽部のコンクールでも上位に入賞しているところだった。吹奏楽部員数も多い。
「にしても、あじぃー」
彼は首にかけたタオルで汗をぬぐい100円ショップで買ってきた
彼は自称センスのない扇子でパタパタあおぎはじめた。
「ちょっとぉ、やる気あんの」
「というか、次の攻撃の応援に備えて、涼んできたほうがいいかもよ」
そういわれると私はスタンドの裏に回り込んだ。
蝉の声が大きくなった。ちょっとした、ラーメンとかの軽食の店がある。
少しペットボトルの水を口に含んだ。その水分があっという間にあせになっていくようだった。
背後で
「カキーン」
「うぉぉぉぉぉぉ」
どよめきが起こる。
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