真夜中のそぞろ歩きにて

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満月を見ると、彼を思い出す。そう、結城礼門だ。彼の腹に傷を作ったのは、こんな満月の日だった。 「さて」 それはさておき。影山直巳が満月の夜にそぞろ歩くのは、昔の思い出に浸るためではない。 あの人に逢えるかな。そんな期待をしつつ歩く。満月は異界のモノにとって特別な日だ。彼もまた、この夜を楽しんでいることだろう。 「あっ!」 早速発見!彼だ。丁度いい獲物はいないかと、民家の屋根に座って様子を窺っている。 「やぁ、死神のもっくん!何してるの?」 「げっ!?」 もっくんと呼ばれた黒衣の男は、その声に飛び上がるほど驚いた。よしよし。出だし好調。 「変態影山!近づくんじゃねぇ」 「変態は認めるよ。でも近づく」 にこっと笑い、影山はもっくんのいる屋根へと飛び移った。 死神である榛名基彦。彼は可愛い系男子であり、バッチリ影山の好みだ。しかし名前は可愛げがないので、勝手にもっくんと命名している。 「近づくな!あと、俺はもっくんじゃない」 「いやぁ、怒った姿なんて小動物だよ。ますます惚れる。ねえ、体液頂戴」 「会話する気あんのか?てめぇ」 噛み合わない会話に、榛名は思い切り屋根の端まで逃げた。こいつ、やっぱり怖すぎる。
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