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「何があってもやらねぇよ!」
榛名は腕を引っ込めたい衝動を抑えながら怒鳴る。すると、影山はいきなり腕に噛み付いた。
「っつ」
「声出せばいいのに」
せっかく不意討ちしたのに残念、と影山は笑う。本当に性格が悪い。
「さっさと飲め」
「はいはい」
まったく、誰かを死に追いやろうとしたのに、また失敗した。狙っていた奴は天寿を全うすることだろう。
ん?ひょっとして、影山の狙いはそれなのか?不要な人の死を防ぐ。そのために榛名をつけ回しているのでは?
「ううん。美味しい。もっくんの血って最高に甘くて大好き」
悩んでいたら、影山がそんな感想を述べてきた。うん。前言撤回。この男にそんな殊勝さは微塵もない!
「じゃ、来月の満月に」
「二度と来んな!!」
たんまり血液を吸われてふらふらの榛名だが、全力で叫んでいた。
「じゃあね」
そんな榛名と別れた影山の口元には、意味深な笑みがある。
「輪廻を握るのは、覚悟がいる。君は、まだそれを知らない」
その言葉は誰に向けたものだったのか。影山は満月の夜をまたそぞろ歩いていった。
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