My Worth

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My Worth

 ピンポーン  玄関のチャイムが鳴る。 「おまたせゆっこ。」  建付けの悪い引き戸を開けると、街灯に照らされた九石魅姫(さざらしみき)が大きな紙袋を両手で持ってそこに立っていた。 「やあやあいらっしゃい。てかその紙袋どうしたの」 「これね、この前京都行ってきたの。とびきり高いお菓子買ってきた。」 「えーー、いいのにそんなの。私ポテチしか用意してないよ。」 「せっかく初めてのお泊まり会だしさ、食べようよ一緒に」 「もー、みぃちゃん大好き」  みぃちゃんは高校生になってから初めてできた友達だ。田舎の中学校の同級生たちはほとんどが地元の高校に行った。でもわたしは食品衛生学科だとか土木科とかあまり興味のない学科ばかりの選択肢が嫌で、電車で30分かかる遠くの進学校に進学することにした。もちろん周りに知り合いはいなかった。もしかすると私の高校生活は3年間一人ぼっちで勉強一筋になるかもしれない、そんな覚悟をしていた時、話しかけてくれたのがみぃちゃんだった。  みぃちゃんとは不思議なぐらい気が合った。洋画好きという共通点が大きかったのかもしれない。パイレーツオブカリビアンのジョニー・デップがいかにかっこいいか、サメ映画で一番くだらないのはどれか、とかの話を一緒にできるのは彼女ぐらいだ。そんなことを語り合っているうちに、夜通し映画を一緒に見よう、なんて計画が生まれるのも自然なわけで。
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