第3話

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 平家母船の甲板で、怒声が突如響き渡った。  平家の大将、トモモリである。  「あれは敵であること明白! 矢で狙い撃て!」  平家の武者たちは、目覚めたように一斉に弓を構えた。  「おう。そう来なくっちゃな」  巫女は、眼に笑みを浮かべながら、五艘めへと飛ぶ。  あまたの矢が空中の巫女へ向け放たれる。  巫女は飛びながら巧みに姿勢を変え、次々と矢を避けていく。  「ふふ。当てられるもんなら、当てて見ろ」  巫女が笑った。  巫女は平家方の船でも構わず、着地する。  平家の武者が突き出すなぎなたをひらりと躱し、次の船へと飛ぶ。  トモモリは歯噛みした。  「くっ。先刻とは違い、今は海上に平家と源氏の船が入り乱れて戦っておる故、味方が犠牲になる。大波は起こせん」  トモモリは前方から次第に近づいて来る巫女を指差し、下知した。  「もっと前へ進め。近距離から狙い撃て」  これに従い、母船を囲んでいた平家の船が、こぞって前進を開始する。  巫女を狙う矢が格段に増えるが、巫女に当てることはできない。  「母船に近い船を引き離して、飛び移れねえようにってことか。甘えな。これでも全力の飛躍じゃねえ。加減してるんだぜ」  巫女は、再度笑う。  その時。     
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