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「はい。通常ならばそうなのですが、この国に来た中で一番身の熟しが未熟な私でも道具無しで乗り越えられます」
「首都防衛ってなんだっけーー?!」
クッションが手放せない生活が続きそうである。
「私はこういう教育を受けて育ちましたので、社交はあまり得意では無いのですが……」
「そんな事ないさ。いつも言っているだろう? 話が面白いって。オペラ座の血が為せる業なのかな」
「そう言っていただけると光栄です。――私の教育はこういったものでしたが、シャイア様はどんな教育を受けられましたか? 大変教養がおありになりますし、この城の図書室は素晴らしい蔵書の数々です。知らない本がいっぱいございます」
ナタリアはシャイアにだけは表情を露わにするように決めたようだが、身に付いた習慣というのはそう簡単に崩れないものだ。無表情のまま、周りにぱっと花が咲くような雰囲気だけを醸している。
「私かい? そうさな、地理や人の覚え、歴史や政治経済、兵法なんかは君と似たような事をしたと思うのだけど……違う事と言えば、剣の訓練と、毒の訓練かな」
「毒の、訓練ですか?」
一国の王子には不似合いな言葉に聞こえる。
「あぁ、使う方ではないよ。受ける方だ。――そうだ、ナタリア。試しに明日から私に、機会があれば毒を盛ってごらんなさい」
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