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父は研究者だった。 母も研究者だった。 研究で忙しいながらも私を愛してくれたと思う。 「……ちゃん、いちごちゃん、こっちおいでー。」 「よく出来ました!」 こうやって頭を撫でてくれたのを覚えているから。 しかし、次第に私を恐るように作り笑いを浮かべ始めたのも覚えている。 「お、お買い物してくるから、お留守番よ、よろしくね。」 「い、いい子で待っててな。」 冷たいコンクリートに囲まれた部屋で留守番をした。 部屋の鍵は閉まっていた。 最初の数回は寂しくて鍵をこじ開けて外に出た。 だけど、外に出る度に頑丈になっていく鍵をみて、父母を追いかけるのは辞めた。 最初は1、2時間で戻ってきていた父母は、いつししか食事の時だけ顔を見せるだけになった。 だけど、必ず帰ってきてくれるから。 その事だけを希望に待ち続けた。 鍵が何重にもかけられるようになったころ、1ヶ月近く顔を合わさないことも珍しく無くなった。 お腹は空かないし、喉も渇かなかった。 ただ愛情を渇望していた。 そして、何も望まなくなった頃 泣き腫らした顔をした父母にあった。 「…この子だけは、…、この子だけは」 こんな顔をさせたものが憎かった。 何が父母の感情を揺れ動かしたのか、嫉妬した。 そしてこの時、父母を悲しませた奴を殺すことを生きる糧とした。 それから長い時が流れた。 父母がやってきた。 「…ごめんなさい。あなたは何も悪くないのに。」 「悪いのは私たちだ。すまなかった。」 ここずっと声すらも聞いてなかった。 この日はぎゅっと抱きしめて頭を撫でてくれた。 この日はずっとそばにいてくれた。 その次の日、 父母が部屋から出てから約30分後、爆発音が聞こえた。 「逃げて」 という父母の声も聞こえたが、かけるのに10分以上かかるような鍵が何重にもかかっているのにどうやって逃げるのだと思った。 煙が充満し、部屋が暑く感じられるようになった頃、鍵をこじ開けられることを思い出した。 だけど、このまま死んでしまっても構わないと思った。 火と煙が充満する中、不思議と聞こえた声がある。 「私は貴女に期待しています。」 なぜかその時「生きなければ」そう思った。
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