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『書店員のお仕事』
書店に勤めていると、版元の営業の方から本のプルーフ(発売前見本。ソフトカバー)をいただくことがある。
わざわざお金をかけて作るのだから、営業にも力が入る。
タダで本が読める、と喜んでばかりもいられない。
感想を求める紙が挟まれているからだ。
ある時、懇親会で営業担当者から「先生が喜ばれるので、是非感想を」とプルーフを渡された。
すでに直木賞を受賞されている有名な作家さんで、のちに別の作品で本屋大賞も受賞。
うっかり感想など書こうものなら「○○書店、○○さんおすすめ」と新聞広告などに使われてしまう。
とはいえ、「〇〇さんに断られた」という話が、偉い人の耳に入っても面倒である。
すでに発売から2か月以上経っている。使われることはないだろう。
しばらくして、営業担当者から先生直筆の手描きPOPが送られてきた。
とはいえ、店頭には出せない。
POPには、わたしの名前とプライベートも書き込まれていたからだ。
しかも、雑誌の『an・an』が同封されている。付箋つきである。
ページを開くまでもない――無断で使われたのだ。
1か月後、悪い予感がして店頭の『an・an』を確認したところ、また載っていた。
一体何度使われたのだろう。
しかし、著者コメント手描きPOPで一番の想い出といえば、
シリーズ累計400万部売れたという本の第一弾発売時に、著者が全国行脚。
その時にいただいたサイン色紙。
最後の一文には、「この書店の女性スタッフは美人ばかり」。
著者が帰られてのち、女性スタッフ全員が店頭に出すことを拒否したことは言うまでもない。
※2022年6月。上記作品、映画化上映中。
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