222人が本棚に入れています
本棚に追加
『初恋のようなもの』
相変わらず休めない。
にもかかわらず、ある本のディスプレイに手間をかけた。
スタッフには、これから映画化になるほかの作品のディスプレイにも使えるから、と言い訳をして。
だが、その作品に双子の姉妹が登場していなかったらどうだろう。
そんな面倒なことをしただろうか?
実は、わたしの初恋の彼女は双子だったのである。
その子が、いかにかわいい娘だったかと言う話は別の機会に譲るとして……。
遡れば、小学校3年の時にも双子の姉妹がいた。
姉が主導権を握り、妹がついていくと言ったパターンであった。
席替えがあり、その妹が隣になった。
妹の方がかわいかった。
平静を装いながら、日ごろ信心などしていない神様に感謝していると先生から、「視力の悪い者の事を考えてなかった。やり直す」と無情な通達があった。
彼女が言った。
「せっかく、八神君と隣になれたのにね。いろいろ話したかったな」。
魔性である。
げに怖ろしきは女である。
幼いうちから、男をたらしこむすべを知っているのである。
中学以降、かわいかろうが美人だろうが、女の子の名字さえろくに覚えず「名前を覚えてもらって光栄」と皮肉を言われたこともあるわたしが、未だにその子のフルネームを覚えているのである。
この話に続きはない。
その年、爆発的に人口の増えていたわが町に3つ目の小学校が完成。
次の学期には、その子はそちらに移って行ったからである。
最初のコメントを投稿しよう!