人魚の涙――海の滴のひと欠片  プロローグ

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1-01  かちり、  細工物の小箱の蓋が開けられた。  女性の手のひらに収まりきるくらいの小さなそれから、ゆっくりと、小さな音が流れ出る。  まるでさざ波のようだ。  そう印象づけて、しばらくその旋律に耳を傾ける。  音のひとつひとつが、体中に染み渡る。その身を護るチカラとなる。  髪の一本一本、足の爪先まで音が行き渡ったと同時に、音は次第にゆっくりになってゆき、  かちり、  そして止まった。  ぱたん、と音をたてて蓋が閉じられる。  完全に沈黙した小箱を青いジーンズの後ろのポケットに押し込めて、一歩を踏み出し、跳躍して、  はじっこのせかいに、ひとりの少女が降り立った。 <<<<<<<<<< プロローグ。ひとつの世界の救済の、これが始まり。
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