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「先生は夏生が仮病で休んでいるとおっしゃるんですか?」 「いえ、違うならいいんです。明日元気に出てくるのを待っています。失礼します」  彼の担任は慌てて話を切り上げ、帰って行った。ケイ子は鍵をかけ、2階に上がってきた。 「あんたの担任ひどくない? 病気だって信じてないみたいだし、疑われてるわよ」  部屋の前で大声でそう言った。玄関でのやりとりはほぼ聞こえていた。半分正解で半分はずれ、と夏生は思った。返事はしなかったが。 「明日行かないと完全にずる休みにされちゃうわよ。そういう先生だった」  それにも返事はしなかった。  翌々日、ばあちゃんは出かけ、1時間ほどで戻ってきた。そして、僕の部屋にズカズカ入ってきて言った。 「夏生、校長先生に言ってきたわよ。担任の先生のせいで学校に行けなくなったって。横暴な先生のせいで繊細な夏生が傷ついて行けなくなった。先生のせいだから、って」  僕が返事をしないから続けてばあちゃんは言った。 「担任を代えてもらわないと学校には行きませんから、って。校長先生が渋るから、教育委員会行きますよって言っといたから、これでしばらくしたら、学校に行けるわよ」 「何言ってるの?」 「かわいい孫のために、ばあちゃん頑張ったんだから」 「頼んでない」 「気にしなくていいのよ。あたしはいつでも夏生の味方だから、ばあちゃんに任せておけば大丈夫」  言いたいことを言って誇らしげに出ていった。  数日経っても僕が学校に行こうとしないので、ばあちゃんはまた学校に出かけて行った。今度は僕がクラスメイトからいじめを受けているという、ありもしない話を作り上げて。校長先生も新しい担任も前の担任も困り果てているに違いない。  夏休み明けの仮病を許して学校を休ませてくれたのは、ばあちゃんが何かの本で読んだ1年に1回だけ、いっぱいいっぱいになった子供を何も聞かず学校を休ませてあげよう、といった内容に賛同してのことらしい。前にママから聞いていたのだが、中学の時のたった1回のずる休みをいつまでも持ち出してママを自分の思い通りに動かそうとすると。もう20年以上経つのに。  僕は考えて、ばあちゃんがくれた休みがかすむぐらい、ずる休みを続けて脅しの材料にならないようにした。ママより僕は賢い。
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