脱け殻

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ある夏の夜の事だった 僕は、夜中に目が覚めた。別に暑かったわけでもなく、寝苦しかったと言うこともなく、なんとなく目が覚めた。 僕は静かに寝ていたベッドから降りて窓の閉まっていたカーテンを開けた。そこには吸い込まれそうな漆黒の夜空に一つ蒼白く光る大きな月があった。その月のせいなのか、僕の体も蒼白く光って見えた。 月を見ていると外に出たくなった、これもなんとなく。玄関から出るには親の寝ている部屋の近くを通らないといけないから僕の部屋の窓から出ることにした。外に出ると、夏の夜とは思えない涼しさだった。サラサラとした風が僕の髪を靡かせる。屋根の瓦も冷たくて気持ちがいい。裸足で出てきてよかったと思う。 暫く、月を眺めていたが流石に飽きがきた。僕は隣の家の屋根に飛び移ってみた。思ったより上手く飛び移る事が出来たから僕はどんどん愉しくなってきた。素晴らしい夢を見ているかの様だった。 ぽーんぽーんと次々に家の屋根に飛び移りだいぶ家から遠くまで来てしまった。今まで鳥のように家の屋根を飛び移ってきたが、自分の家から離れる、という事でだんだん、不安がでてきた。僕は帰ろうと思って今飛び移ってきた屋根を戻ろうとしたが、上手く飛び移れず地面に落ちてしまった。不思議と痛みは感じられなかった。屋根から落ちてしまったからもう地面を走るしかない。僕は焦りをを感じて、馬よりも早く走った気がする。 焦る僕とは対照的に、吸い込まれそうだった夜空は明るくなり始めていた。朝になれば親も目を覚ますだろう。もし、目が覚めていたら物凄い説教を聞かせれるに違いない。ますます、走る足が回転数をあげる。汗が滝のように流れてくる。身体が浮いているような気がする。六時を示すチャイムがなる。間に合わなかった。僕の家はこのチャイムをきっかけに起きるからだ。走っていた足を止めた。六時のチャイムがなり終わった頃僕は家についた。丁度、僕の脱け殻が運び出されるところだった。
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