白い手

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 誰かが、トイレの扉を引っ掻いている?  その思いが、意識を微睡みから現実へ戻した。  意を決し、 「おーーぃ…。」  語尾は小声になった。  …。  返事は無い。  だが、音は止んだ。  今までの事が収まった様だ。  ほっと、一息…。  両膝の上に両肘を置き、指を組み、上に顎を乗せる。  このポーズが落ち着く。  訪れた静寂。  突如、知る!  静寂を破るのは、音ばかりではないと! 『ぬう?。』  この表現は、この時の為に作られたのではないかと考える程に当てはまった。  扉と床の僅かな隙間から、白い手が出る。  そいつは、獲物を探すかの様な動きは、空を掻きむしる。  扉のノブを回しゆっくりと開けた。  そして、目が合う。  そう、白い手の正体と…。 「こら、駄目だろ。引っ掻いちゃあ。」 「にゃ?。」  甘えた返事が返ってくる。 「待ってろ。」  俺はトイレから出た。  廊下で大の字になり寝っ転がる姿に、 「待っててくれたのか。」 と、腰を下ろした。 「!?」  驚いた! 「廊下って冷たくて気持ちいい!」  白い手の持ち主を見ながら、 「そうか、この事を教えてくれたんだな。」 と、添い寝する。 「これなら、寝られそうだ。」  ご褒美に頭を撫で、 「明日、エアコン見に行こう…。」     
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