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白い手
「暑い!」
その言葉で起きるのは何回目だろう。
次は、時計と温度計の確認。
これも、何度目だか。
「二時…。」
当然、午前だ。
「30℃…。」
ついに温度計が壊れたか? いや、壊れているのは地球なのかもしれない…。
「エアコン買おう…。」
最早、扇風機は部屋の暑い空気を混ぜるだけの機械と化していた。
「よいしょ…。」
目が覚めたついでに、トイレに行く。
起き上がり、暗がりの廊下を慣れた足取りでトイレへ向かう。
この時は、気が付かなかった…。
暗闇から獲物を狙う如く注がれる視線に。
トイレに到着。電気は点ける。
洋式便座に座り、ボンヤリと考えていたら、声になっていた。
「はあ、ボーナス飛ぶなぁ…。でも、エアコン付けないと寝られないしな…。」
考えでは無く、この熱帯夜に対する愚痴だ。
「はぁ…。」
ため息に声に混じるリズミカルな音。
それは小さく真夜中だから聞こえる音。
意識を向けると、既に音は止んでいた。
気のせいだろう。
「あぁー、眠っ。」
それは欠伸(あくび)と共に出した。
『…。』
何かが聞こえた。
『…。』
まただ、今度は確かに聞こえた。
耳を澄ますと、小さく聞こえた。
『カリカリ…。』
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