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「唯っ、大丈夫か」  俺は唯の手を取って立ち上がった。 「早く立つんだ」  唯の手にあったビニール袋の水が零れ、金魚が少ない水の中で喘いでいた。 「さ、行くぞ」  俺は前を向いて走り出そうとした。 固く握った唯の手を引くが、その手応えが突然失せた。 「どうしたん……!……」  俺の手の中には、手首から先と金魚の入ったビニール袋だけが遺されていた。唯の手首の断面はレアステーキのようなピンク色だった。 ***  俺はベッドの上で必死になって息を整えている。  また、あの時の夢を見た。胃から何かがせり上がってくる。介護用ベッドの補助腕の力を借りて車椅子に乗ると、俺はトイレに急ぎ、腹の中のものをすべて吐いた。  部屋に戻るとテーブルの上の水槽の中で年老いた金魚が物憂げに鰓を動かしていた。
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