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 また、暑い夏とともに奴らがやって来た。  左の眼窩に挿入されたソケットから様々なステータスが直接脳へと送り込まれてくる。  距離、敵速、温度、湿度、気圧……  そして、デジタル化された敵の映像。  右目は暗いコクピットの中に浮かぶ計器を確認する。機体を瞬時に駆動させるために。 〈よう、誰が『頭』潰すか賭けねえか〉 〈いいぜ、今夜の配給酒はオレが頂く〉 〈ぬかしてろ。てめえが撃てるのは七面鳥ぐらいだろが〉  機甲猟兵第104小隊の隊員たちの軽口がヘルメットのイヤーガードから雑音とともに耳に届く。  全高八メートルの巨人の腹に俺は収まっている。チタン合金製の外殻に守られ、じっと狙撃の機会を待っているのだ。
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