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「まだ早いな。焦りすぎだ」
「うん、分かってるんだけど……」
「そのうち腕をあげるさ」
「おいおい、俺にもコツってのを教えてくれよ」
スキンヘッドの巨漢が二人の間に笑いながら割って入った。副隊長のナーガだ。のべつまくなし飲んだくれ、コクピットにも酒を持ち込んでいるらしい。今日の賭けを持ちかけたのもこの男だ。曲者揃いの『八部衆』を軽いノリでまとめ上げる、これでいて抜け目のない男だ。
「ダメだよ。内緒でボクだけが聞いてたんだから」
「ケチケチすんなよ」
ナーガは豪快に笑ったが、その笑いはすぐに陰った。大型ヘリが戦場で半壊したギリメカラを収容してきたのだ。
ギリメカラは象に似た身体に人間型の上半身をつけたケンタウロスのような姿をしている。両手に持った、スパイク付きの巨大な盾が特徴だ。ドゥルガーはセンサー類が集中した頭部を持つデザインをしているが、ギリメカラには頭がなく、代わりに20㎜七銃身のガトリング砲が取り付けられている。重厚ではあるが、ドゥルガーの女性的な流麗なフォルムとは比べ物にならない不細工な機体だ。
「年々サラマンダーが大型化してきてやがる」
ナーガが言った。それは俺も感じていた。
「あんなクソ野郎どもにやられちまいやがって……」
俺が吐き捨てるように言うと、ガンダルヴァが身震いをして機体から顔をそむけた。
ギリメカラのコックピットがあった場所には焼け焦げた穴があるだけだった。
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