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ドームのような水色の空に
網目状の亀裂が入り砕けていく
オパール石のごとき虹色にくるくる変わって
カバーガラス大の宇宙のカケラが下へ下へ舞い上がる
灰色の地平線の紅い大地は
フィクションくらいに曖昧で
だけど確実に空はそこに溶け込んだ
君の立つ私たちの世界に溶け込んだ
たったひとり
前へ前へ盲目的に進む君の足取りが
ノイズが入るように
刹那ごとに私に刻まれる
くるりかちゃり ひらひらと
流動する街に剣が突き刺さるみたいに
この
ネジが切れかけたからくり世界は
君を必死に拒むだろう
どれほど血まみれにしたって
飽くことがなく容赦なく
For you if it
私の声が世界をぶち壊す
宇宙が跡形もなく砕け散っても
私の才覚であれば可能なことだ
君が受けるべき傷が捻じ込まれることへの躊躇などない
世界を癒そうとする君ほどの覚悟と同質の
君を救いたいと叫ぶ私の願いがここにある
霧を帯びた風が
太陽を木陰を水流を血痕を
等しく公平にさらっていく
記録も予言も困難なナイーブな自然科学を
妄執的に取り込もうとする君が見えた
先祖代々受け継がれる懐中時計は正常に針を動かす
拳をどんなに握りしめても掴めない宝石が 刹那ごとに私に刻まれる
ひとつふたつ どくどくと
私の
左心室の膨らみが消えてゆく
私たちの
抱きしめあえる時間が消えてゆく
たったひとり
前へ 一歩
動き出した私がいた
これっぽっちでやめてなるものか
君の仕草を思い出して虚空を睨む
海を割り緑を枯らし私を殺しても
空を砕くと
君がそう宣ったのだから
For you if it
君の剣が世界をぶち壊す
君が跡形もなく砕け散っても
君の憤怒であれば可能なことだ
どんな代償を受けても躊躇などはない
ただ一秒 ただ一瞬だけ
君は私のために慟哭した
灰色の地平線がぼやける
波打つ水色の空
火の粉を吐く紅の大地
砕けて落ちて輝いて
触れて絡まり溶け合って
優しく散らばってゆく
君がみんなを救済するために
自らを誰もいない漆黒に追いやることを辞さないのならば
私は君を幸福にするために
私が君を愛するために
君の決意を殺すことを辞さない
For you if it
私の愛が君をぶち壊す
世界の機能が砕け散っても
私の正義であれば可能なことだ
私と君が幸せになることに躊躇などない
結末は虹色に完成した
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