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深い山の奥に、小さな村がありました。
山と山の間のわずかな土地に、田んぼをおこし、畑をひらいた村です。
この村に佐吉という子供が、一人ぼっちで住んでいました。
佐吉は自分がどうしてこの村にいるのかを知りません。物心のついたころから、父も母もおらず、村の手伝いをして一人で暮らしているのです。
田んぼや畑での野良しごと、炭焼き小屋での寝ずの番、焼き物の土こね、子守り、村祭りの手伝いなど、いくらでも仕事がありました。
祭りの用意では、縄を張る役目をよくしたものです。
木と木の間に縄を張るだけで、一日分の手間賃がもらえるのですから、わりのいい仕事です。
縄には稲妻のような形に折り曲げられた白い紙が、いくつも垂れさがっています。
垂れた紙の先が、頭に当たるか当たらないかの高さになるよう、大人の背丈よりもずっと高いところまで、木に登ります。
「ここは、あちらからのお誘いが来るからな。くわばらくわばら」
縄をしばりつけるために木の幹にはりついた佐吉は、村人が声をひそめて言葉を交わしていることに気がつきませんでした。
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