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「年は26。君は?」
年下か。それも悪くない。
「加賀美彰人(かがみあきと)」
「日本人の名前は不思議な発音だな。どう呼べばいい?」
「加賀美でも彰人でも好きなほうで」
「じゃあ、アキトにしよう」
会話の間もリカルドは加賀美の髪に手を差し入れて、短い髪のさらさらした手触りを楽しんでいる。
「素敵な黒髪だ…」
唇が触れそうな距離で囁かれた。そのまま髪にキスをする。
されるままになりながら、加賀美はリカルドの胸にしなだれかかった。
固い胸筋に手を這わせて目を閉じると、きちんと気配を読んだ唇が頬に触れ耳に触れ、顔中にキスの雨が降る。
彼はどうやら上品かつロマンチックなセックスを好むようだ。再び唇で戯れ合いながら、両手はゆったりとお互いの体のラインを確かめる。
「抱いてもいいか?」
額を合わせて誘う彼に、加賀美はしっとりした声で囁いた。
「いいえ、今日はご挨拶だけ」
思いがけない返事に、リカルドが目を瞬いた。
「何だ、おあずけなのか?」
「そんなにがっつく人じゃないでしょう?」
「ここまで来てそれが通じるとでも?」
「慎重派なのでね、よく知らない男とは寝ませんよ」
悪友たちが聞けば爆笑物のセリフを吐いて、つつっと人差し指でリカルドの頬をなぞる。上目づかいで少しだけ口角を上げて微笑む。
小悪魔の微笑みに、上品な王子様の顔がわずかに苦笑する。
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