Siと言うまで帰さない

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「リカルド、どうした、浮かない顔だな」 「いつもこんな顔だよ」 「そりゃお前がご機嫌だったことはあまりないが、そこまで仏頂面でもなかったと思っていたがな」  歩き回っている給仕から今度はワイングラスを受け取って、ソファに座ったミケーレがリカルドの顔を覗き込む。  リカルドの肩まで届く長めの髪がゆるやかなウェーブを描いている。華やかで上品な顔立ちは王子様とあだ名されるのも無理はない。ハニーブラウンの瞳が茶色のまつ毛にけぶっている。  アンニュイな表情が似合う男は肩をすくめた。 「下らない事が多くてうんざりしてるだけだよ」 「それは然り。この世のことなんておよそすべてが下らない」  ミケーレの芝居がかった言い様に、リカルドは疲れたようなため息で答えた。その顎をミケーレがすくいあげて意味ありげに囁く。 「いっそ恋でもすればいい」 「バカバカしい。恋くらいでこの鬱屈がどうにかなるとでも?」 「なるかもしれないだろ? ほら、こっちを見てるぞ」  どこかで見た顔のドレス姿の女がグラス片手に軽く首を傾げて微笑む。  モデルか女優か、きれいな顔にきれいな体。
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