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放課後。
担任から、例の不審者が隣町で逮捕されたと話しがあった。
40代、無職の男性だったとか。
私と朔也くんは、ハナミズキ通りを並んで歩く。
「咲結は今日もバイト?」
「そうだよ!朔也くんも?」
「もちろん。帰り何時?迎えいく。」
「不審者つかまったし、大丈夫だよー。遠回りでしょ?あっ。」
「なに?」
「朔也くんのおうちは、どこ?」
「あー知らなかったっけ?月野町。」
「けっこう近いんだね。」
「そうそう、てか通り道だし。チャリ、現場にあるからさ。迎えいくよ。」
「うん、それなら!ありがとう!」
学校からの帰り道、すれ違う女の子の大半は、朔也くんに熱い視線を送っていた。
学校内ではきっと、私と朔也くんの交際のニュースと共に、佐々木くるみ事件のことも知れ渡っているのだろう。
視線は感じるけれど、よくドラマで見るような陰口はもちろん、嫌がらせのようなことをされることは一切なかった。
だけど、今でも不思議に思う。
私よりも美人な子も、いい子も、たくさんいるのに。
朔也くんなら、選び放題だろうに。
どうして私なんだろう。
たまたま、私がお客さんだったから…?
それならもし、違う子がお客さんだったら…?
自信がなくなってくる。
朔也くんは大きな手で私の手をやさしく握りながら、鼻歌を歌っている。
この歌は…あっ。大ヒットした映画に使われていたバンドの歌だ。
「その曲、好きなの?」
「あーうん、映画見て、好きになった。咲結、みた?」
…。
「咲結?」
「朔也くん、どうして私のこと好きになってくれたの?」
「…は?」
彼は目を丸くして私を見た。
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