2.風変わりな求人

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その日は最終試験として時々雛さんの代役をこなすことになったので、布団をかぶって返事をしたり、顔が見えないよう反対側を向いてベッドに入ったりした。 髪は雛さんの髪とそっくりなウィッグを被った。 誰かが部屋に入ってくるときはバレないかとひやひやしたけど、用件を伝えに来た星野さんや部屋に入って来る世話係役の人たちが不審に思わず去っていったそのたびに、雛さんと二人で喜び合った。 「誰も疑ってないみたいじゃないか。全く灯は最高だよ」 「あっ真さん、ありがとうございます」 「へぇ、今日は驚かないんだね」 「さすがに慣れましたよー」 「お兄様、まさか今までわざと灯さんを驚かせていたわけではないですよね?」 「えーっそうなの?」 この兄妹ともすっかり打ち解けて、まるで以前から知り合いだったようにさえ感じ始めていた。 「さて、最終試験も問題なさそうだからいよいよ本番だけど、その前に灯に説明しておかないとね」 ついに今まで謎だったことが明かされる。私は胸の高鳴りを感じつつ次の言葉を待った。
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