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「実は、雛は今から僕と旅行に出かけるんだ」
「は?」
「それで、その間は雛と入れ替わってもらいたい」
それだけ?それだけのために私を雇ってここで訓練までさせたの?
「あの、旅行なら私を雇わなくても休暇をとって行けばいいんじゃないですか?」
「理由は言えないけど事情というものがあってね。家の者に見つからないようにしないといけないんだ。そこは理解してくれ」
「家の者って?えっ、まさかこの洋館て・・・」
「私たちの自宅がどうかしたの?」
「ええーっ!」
こ、これが自宅?ウソでしょ。
「じゃあ星野さんとかお手伝いさんみたいな人たちって・・・」
「星野は執事で他の人たちは使用人よ」
「灯は今までこの家を何だと思っていたんだい?」
「だって、友人を演じて訪ねてこいとか、雛さんの代役とかいうからてっきり撮影現場か何かかと・・・騙されたー!」
「・・・騙した覚えはないんだけどなぁ」
そうか、きっと名家だから色々と厳しいんだわ。勝手に外出も出来ないからたまには外に出て自由になりたいとかそういうことよね。でもその身代わりを雇おうとするなんて、さすが金持ってる人の発想は違うわ。
「灯さん、今まで黙っててごめんなさい。私のわがままなの。小さい頃に家族で過ごした海辺の旅館にもう一度だけ行ってみたいって両親にお願いしたんだけど外出は諦めるように言われてしまって・・・。そしたらお兄様が現れて、連れて行ってくれるって約束してくれたの」
まさかこんな少女漫画みたいな展開が現実に起こってしかもそれに関われるなんて。何故か笑いがこみ上げた
「ふ、ふふふふ」
「灯さん?どうしたの?」
「事情は理解しました」
「えっ」
二人同時だった。さすが仲良し兄妹。
「後のことは心配せず私に任せて二人で存分に楽しんできて!」
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