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私の服を着て帽子を目深に被った雛さんが無事に敷地から出るのが見えた。
タクシーに乗り込む前にこちらに手を振ったので私も窓から大きく手を振って応えた。
さっきは私にとって意外な真実ばかりで驚いたけど、雛さんの願いを叶える手助けになるのは本当に嬉しいことだったし、それにこんな豪邸の部屋で二晩過ごすのも楽しみだった。
運ばれてきた夕食は思ったほど豪華さはなく量も控えめで薄味だったけど、これまで味わったことがないくらい美味だった。
毎日朝から夕方までここにいたから昼食も出してもらってたけど、やたら美味しかったのはそういうことだったのかとようやく気付いた。
それにしてもあらためて見るとやっぱり広い部屋だ。
この四日間で見慣れたはずだけど一人きりになると殊更に広く感じて、夜になると寂しさが増すばかりで眠れなかった。
「雛さんも私が帰った後は寂しかったのかな」
今頃どうしているだろう。旅館に到着して、明日のことを考えながら眠りについただろうか。
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