3.代役

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あまり眠れなかったので予定の時間に起きられず、朝食を運んできたノックで目が覚めた。 まあいいや、今日も時間はたっぷりある。 「部屋の中でしたら自由に見て回ってもいいわ。使いたければ何だって使って」と雛さんに言われていたのでおそるおそる部屋の中を探索した。 ワードローブの様々な洋服を試着してみたり、いかにも高価そうなアクセサリーをつけては鏡に映したり。 まるでセレブのお嬢様になったみたいで、飽きることはなかった。 部屋の探索を続けていると、フォトフレームがいくつか棚に飾られているのが目に留まった。 ご両親と思しき二人と幼い頃の雛さん。男の子は真さんだろう。 私の知っている二人とは違う姿が何だか微笑ましかったが、その中の一枚の写真に違和感を感じた。 「これって真さん、だよね」 それは雛さんと真さんが二人で写っている写真。 小学生くらいの雛さんの隣には、真さんが立っていた。まるで成長していないかのように今と同じような姿で。 「お兄さんがもう一人いるのかな」 それより更に成長した雛さんの写真には、真さんらしき人は写っていなかった。 雛さんが言ってたように、この時期は使用人の方もほとんどが休暇中で昨日から部屋に訪れる回数もめっきり少なくなった。 おそらくそのタイミングを狙っての計画だったのだろう。おかげで雛さんがいないことが発覚する可能性が減るのはとてもあり難い。 間違いなくバレてしまうお医者さんの訪問診療も今週はないし・・・ お医者さん? 私はこの家にいる人は全て役者か何かだと勘違いしていた。 しかし実際は本物の執事や使用人だった。 ということは、あの医師や看護師も本物?じゃあ雛さんは本当に・・・ このときほど自分のことを愚かだと思ったことはなかった。 どうして気付かなかったんだろう。どうして行かせたんだろう。 馬鹿だ、私は何て馬鹿なんだ! 心配してもどうにもならないけど気が気ではなくなった。 「明日無事に帰ってきて、お願い!」
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