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「ふわっ!」
ベッドを挟んで反対側にいつの間にか男の子が立っていたので、驚いてよろけてしまった。
「もうお兄様ったら、水瀬様がびっくりしているじゃありませんか」
「ごめんごめん、そんなつもりはなかったんだけど。僕は榊原マコト、雛の兄です」
兄?弟じゃなくて?てっきり私や雛さんより年下かと思った。
「あ、いえ、こちらこそすみません、水瀬灯です。あの、私、誰かに似てるんですか?」
「実際に見ても君は雛に似てるって話」
「えっ」
私は雛さんをあらためて見つめた。
いかにもお嬢様といった佇まい、清楚な美しさが滲み出てるお顔、細い体に白い肌。
確かに歳や背丈は同じくらいでも随分違うと思うんだけど。
「いやぁ全然似てませんよー。私、雛さんみたいに可愛くないし・・・」
「でも君は候補者の中から選ばれたんだからそこは自信を持っていいんだよ」
選ばれた?雛さんと似てることが選考基準?どういうことだろう。
「あの、選ばれたってことは採用試験に合格したってことですか?」
二人は目と目を合わせた。
「僕はいいと思うんだけど、どうかな」
「ええ、私も」
「というわけで君を採用したいんだけど、どうする?」
断る理由はなかった。ただ気になることはいくつかある。
「あの、その前に聞きたいんですけど、私は何をすればいいんですか?」
「そうだな、詳しいことはまた説明するけど、要は雛の代役を演じてもらいたいんだ」
やっぱり役者だ。急な事情で代役が必要になったに違いない。
「わかりました。よろしくお願いします!」
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