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翌日から役者見習いのような日々が始まった。
部屋の外では雛さんの友人を演じ、あとは一日中部屋の中で雛さんの行動や会話を覚えるようにというのが真さんから課せられた「仕事」だった。
といっても雛さんはずっとベッドで寝ていたし、医者役や世話係役と思われる人が来るとき以外は特にすることもなさそうだったので、私は彼女とお話をする中で話し方やしぐさを覚えようとした。
おかげで私は仕事上だけでなく、本当に雛さんを友人と思うようになっていった。
真さんは私が来たときと帰るとき以外に、時々ふいに現れては(そのたびに私は驚いてしまうのだけれど)指導をしたりアドバイスをしてくれた。
真さんといえば最初の日に言われた注意事項の一つがまた変な内容だった。
「僕たち二人以外の人とはなるべく話をしないように。特に僕のことは絶対に内緒。名前も出しちゃ駄目だからね」
仕事の内容も相変わらず変というか、雇われた目的が不明だった。
カメラもスタッフも見当たらないから撮影とは思えない。
でも演じるのは何だか面白かったし、広い豪邸にも入れるし、雛さんと会うのも楽しみだったのであっという間に三日間が過ぎた。
その日の帰り際に真さんに明日から二泊してもらうけどいつもと同じ感じで来てと言われた。
親友の香奈に協力を持ちかけたら男と外泊だと散々からかわれたが、食事を奢ることで何とか協力をとりつけた。
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