屋上の話

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屋上の話

 そうして、扉を開けた僕の眼前に鉄紺が飛び込む。  次いで、視覚から聴覚から触覚から情報が入り込んでくる。  校舎の息遣いと賑やかさと対称的なこの場の静寂が感じられる。浮かぶ入道雲がより鮮明に見える。茹だる暑さと熱気が身体の深いところまで沁みる。燃えて萌える夏の緑がより一層眩しくなる。日差しが痛いほどに肌に刺さる。僕を撫ぜる涼風を感じる。額を伝う汗が落ちて、雫の焼ける音が足元から聞こえた頃に僕はやっと理解する。  これは決して天使などという清らかで聖なるものではなく、きっと贖罪なのだろうと。  蝉が僕を嘲笑う声が聞こえて、僕は泣いた。
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