奏でるは秘密の鼓動

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澄んだ空気が鼻の奥を刺す。 はぁっと吐いた息の、その白さに寒さを痛感する。 今夜はとても寒い。 日が暮れた途端に冷え込みやがった。 あーー、寒ぃ。 肩をすくめ、早足で進めば、我が家はもうすぐそこだ。 アパート前の、ちょっと小洒落た街灯が視界の隅に入り、そこで俺は顔を上げた。 ん?? なんだあれ? 街灯の奥、その明かりが届かない暗闇の中に…ゴミ袋?いや、人か? なにやら黒い塊がうごめいている。 おいおいおい。 なんかヤバそうな感じ? 怖いのとかマジ勘弁なんだけど。 一歩、また一歩と、ゆっくり、ジリジリと慎重に進む。 そのまま通り過ぎようとも思った。 だが、怖いもの見たさでちらりと、その暗闇のほうに視線をむけてしまった。 すると。 「あぁぁぁ!!テッちゃーーーーーん!!」 うごめいていた黒い塊は言葉を発し、抱きついてきた。 飛び込んできた塊は俺の良く知る人物でーー。
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