奏でるは秘密の鼓動

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目当てのモノは見つからないらしい。 バックをアスファルトの上に投げ出し、しゃがみ込んで中を覗いている。 ガサガサ。ゴソゴソ。 必死にバックと格闘している姿は、大好きなおやつをカゴから出そうと悪戦苦闘(あくせんくとう)している子犬のよう。 しばらくその愛くるしい姿を眺めていると。 「あったー!」 とでっかい声が響く。 手にはスマホが握られていた。 「テッちゃん!とにかく!こ、これ!!」 「うん。スマホだな。で?」 「ライブ!完成したから!テッちゃんに聴かせたくて!嬉しくって!それで飛び出してきた!」 キラキラした目で見つめてくるソウタの言葉はちぐはぐだ。 けど、言いたい事は何となく解った。 知り合いのバンド何組かで卒業ライブするとか言ってたな。 たぶん、それ用の新曲。 「てか。メールで送りゃよかったんじゃね?」 「だーかーらー!!直接聴いて欲しかったの!テッちゃんと一緒に聴きたかったんだって!!」 ……なんだよ。 思わず、右手で口元を隠した。 じゃないとニヤついたこの顔を見られてしまう。
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