24人が本棚に入れています
本棚に追加
目当てのモノは見つからないらしい。
バックをアスファルトの上に投げ出し、しゃがみ込んで中を覗いている。
ガサガサ。ゴソゴソ。
必死にバックと格闘している姿は、大好きなおやつをカゴから出そうと悪戦苦闘している子犬のよう。
しばらくその愛くるしい姿を眺めていると。
「あったー!」
とでっかい声が響く。
手にはスマホが握られていた。
「テッちゃん!とにかく!こ、これ!!」
「うん。スマホだな。で?」
「ライブ!完成したから!テッちゃんに聴かせたくて!嬉しくって!それで飛び出してきた!」
キラキラした目で見つめてくるソウタの言葉はちぐはぐだ。
けど、言いたい事は何となく解った。
知り合いのバンド何組かで卒業ライブするとか言ってたな。
たぶん、それ用の新曲。
「てか。メールで送りゃよかったんじゃね?」
「だーかーらー!!直接聴いて欲しかったの!テッちゃんと一緒に聴きたかったんだって!!」
……なんだよ。
思わず、右手で口元を隠した。
じゃないとニヤついたこの顔を見られてしまう。
最初のコメントを投稿しよう!