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(miya side-8) でも、なんて? なんて言って声をかける? 考えてる余裕なんてなかった。 俺を間にはさんで、シバに挨拶をしてるそいつ。 慌ててそっちの方向に進もうとしたら、 「マキー。今日はサンキュな!気を付けて帰れよ?」 シバがわざと大きな声で、そいつの名前をよんだ。 おかげで「マキ」が俺の方をちらりと見た。 確かにその時。 そいつの目が、ちょっと細めの目が一瞬見開いた。 …見開いて、すぐに逸らされた。 興味なんかない。そんな感じで。 当然だ。 試合では、たぶん何度か顔合わせしてるけど、 相手チームの選手をいちいち全部、 覚えてるわけないし。 そもそも俺だって、あいつ誰?な感じだし。 もともと人の顔覚えんの得意じゃないし。 初対面みたいなもんだ。 だけど、それで終わらせる訳にはいかない。 ここで「はいさよなら」じゃ駄目だ。 気づいたときにはつかつかとあいつに歩み寄って、 「お前…電車?」 声をかけていた。
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