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(maki side-4)
式場の入り口で見かけた人は。
あの深山は、やっぱり「あの」深山だった。
その深山が、先輩に軽く手を挙げて挨拶をして、そのままの流れでこちらに向かってくる。蒔田のほうが出口がわにいるのだから、それは当然の流れだ。
さっきも目の前を通ってったなー、なんて。
とりとめのないことを考えながら、早歩きで近寄ってくる深山を見送った…つもりだった。
が。
「お前…電車?」
深山は披露宴の前とはちがって、足早にとおりすぎることはなく。さも当然のように、蒔田の前で足をとめ、声をかけた。
「え」
「駅まで、タクシー割り勘にしね?」
突然の申し出に、蒔田は目を見張る。
これは全くの予想外。だけど、断る理由はない。
ここからタクシーで向かう駅なんて一つしかない。
一人で乗るより安くすむし、バスに乗るより早い。
「いーっすよ」
ちょうど指定取ってる新幹線、ギリなんで。助かります。なんて付け加えてみる。
だから断る理由がないんです、という顔をして。
「んじゃ決まりな!」
蒔田の返事を半分くらいまで聞くと、深山はそのまま出口にむかって歩き始めた。
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