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(maki side-1) ミヤさん、こと深山と久しぶりに出会ったのは、地元の高校の、部活の先輩の結婚式の披露宴だった。 ×××××××× 着なれないスーツ。 来たことのない場所。 そして結婚式という、非日常のシチュエーション。 (やべー。緊張するー) 蒔田達(マキタタツ)は、ホテルのロビーでスマホの画面を睨み付けていた。 祝儀袋を出すタイミングや、そもそもこの服装で場違いでないのかとか。判らないことが多過ぎて、会場のあるホテルでいまさら検索すること数分。 あれこれ迷うよりも他の参加者の真似をしたらいいんだという、グー◯ル先生もビックリな結論に達して、ようやく重い腰をあげたとき、会場に向かって足早に歩く人の姿を見つけた。 蒔田より少し背の低いその人は、蒔田のように迷う様子もなく、会場となるホールの扉の前の受付へと向かっていく。 チャンス到来、と慌ててその後を追って祝儀を受付へと渡し、記帳台に並ぶように立った。 筆ペンで字を書くのも、めったにない。力んで書いた蒔田の名前は、もともときれいなほうではない字が、さらに残念な仕上がりになってしまった。 書き上げてほぅと息をもらすと、先に書き終えた前の人の字が目に入った。 ---深山遊人(ミヤマユウト)
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