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列車の席で、海音はあの本をリュックから出して読み始める。
「2009年のヤヌスの月(1月)、大海の島に生まれた黒い男が大国の長(おさ)となる。」とあるが、これは、ハワイ生まれのバラク・オバマがアメリカ大統領に就任したことを指していると言う。
「2011年の火星の月(3月)、大地は揺れ、海から大波が押し寄せ、人を飲み込む。大きな爆発があり、毒物が溶け出し、近づくことができなくなる。」とあり、これは、東日本大震災のことを言っているとの解説がついていた。
なによ、なに。海音は、だんだん怖くなってきて、本を閉じる。そうだ、お兄ちゃんに訊いてみよう。これ、本当なのかどうか。スマホのメッセージ・アプリを開いて書き込む。
‐イヤガの予言って本当なの?
現役予備校はお昼休みとあって、直ぐに返信がある。
‐あれ、見つけたのか。やめとけ、読むの。
‐なんで?
‐気になって勉強できなくなる
‐ほんとうだから?
‐わからない
海音は、溜息をつく。お兄ちゃんにも真偽のところはわからないようだ。お腹の下の方がモヤモヤしていて、トイレに行きたいのとはまた違ったそわそわしたような感じがした。そんな彼女の漠然とした不安を他所に、列車はよく晴れ渡った真夏い空の下を海に一直線に向かっていた。
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