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2.真っ黒に日焼けしたサーファー
「こんにちは。」
海の家には、ドアもインターフォンもない。飲んだり食べたりしているお客さんたちを掻き分け奥の方まで進んで行って、大きな声で店の人を呼ばなければならない。海音(まりん)は、少し恥ずかしかったが、勇気を出して声を絞り出した。
「やぁ、いらっしゃい。海音ちゃん、大きくなったね。」と伯父さんが顔を出す。隣に大学生らしい男の人が、「あぁこの娘(こ)か。」という表情をして、「はじめまして。徳永です。」って自己紹介する。にっこり笑った顔を見て、優しそうな人で良かったと海音は心の中で胸を撫で下ろした。
「海音です。よろしくお願いします。」と頭を下げる。
伯父さんから、「手伝いは明日からでいいので、海に行って泳いできたら。」と言われて、一目散に更衣室に駆け込み、Tシャツとデニムを脱いだ。西銀座の水着専門店でお母さんに買ってもらったワンピースに着替える。ホワイトが基調で下がスカートのように二重になっていて、女の子らしいのを選んだ。ビキニを着る自信はなかったけど、スクール水着みたいのは着れない。だから、お母さんには気の毒だったが、何ども着替えてようやく可愛いのにたどり着いた。
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