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青い海
海洋生物学者・佐藤正直はクルーザーの後部甲板で身を震わせた。
海が、怖いのだ。
波に合わせて上下する船の律動、海面が刻々と色を変える様子は美しいと思う。
鼻孔を刺激する塩分の匂いも好きだ。
佐藤が怖れているのは、意思を持つ生命体、「海」だ。
水着姿で一段高いブリッジに立ち、クルーザーを操舵する舟橋澪はちがった。
潮風をほほに受け、陽光に目を細めている。
数百メートル先でイルカが跳ねた。
「佐藤くん、イルカの群れ! 追うから」
彼の返事も待たず、スロットルを全開にする。
口元の笑みは次第にハミングへと変わり、幼い頃に覚えた海の歌が流れた。
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