第1章

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 ん?夏休みの初日っていったら、約一カ月前じゃん。それは、ついこの間って気がするけど……。どうやら翼ちゃんのご近所さんである翔ちゃんと、少し離れた所に住む僕とでは久しぶりの尺度が違うらしい。 「で、その、む・ら・や・ま・さ・ん、がどうしたの?」  いつの間にか、移動して、隠れるように僕の後ろに立っていた竹ちゃんが言った。  また茶化してるなぁと鼻白んだが、驚くことに翔ちゃんは相手にしなかった。というより、昨日の事を思い出すことに集中して、気づいてないのかもしれない。僕がぼんやり考えていると、やがて翔ちゃんは話し始めた。 「んー、てか最初は村山だってことに気づかなかったんだよ。坂を下っている途中で見た時は、不審者だと思ったな。だって、この植込みの周りをちょろちょろ歩いては、覗きこんでたんだぜ?」  そう言って、翔ちゃんは植込みを顎で指した。僕と竹ちゃんが、植込みを見たのを確認したのか、翔ちゃんが続けた。 「で、だんだん近づいて、公園に入ったくらいかな。ようやく、村山だ!って分かって、声をかけたんだ。そしたら、髪留めを落とした、って言われた」 「なるほど。不審者のような行動は、落し物を探していたからだったんだね」  僕が言うと、翔ちゃんは頷いて口を開いた。 「そうらしいんだ。それで――――」 「それで一緒に探してあげた、と。翔ちゃんってば、やっさしぃー」  竹ちゃんが茶化すように言葉を挟んだ。しかも、僕の背中に隠れながら。  当然翔ちゃんは、 「あのなぁ、素通りするわけにはいかだろ!!」  と怒るわけで、間に挟まれた僕は肩を竦ませながら、両手のひらを翔ちゃんに向けた。 「まぁまぁ。で、見つかったの?」 「え、あぁ、髪留めはすぐに見つかったんだよ。ただ、違うって言われた」  違う?僕が、首を傾げると、翔ちゃんは頷いて続けた。 「俺が見つけたのは、赤い髪留めだったんだ。だけど、村山のは青だったらしくてな。しばらく探したんだけど結局青い髪留めは見つからなかった」  ここまで聞いて、僕はふと疑問が浮かんだ。 「あれ、じゃあウサギは?翔ちゃんはなんでこのウサギを見つめてたの?」 「さっき、赤い髪留めを見つけたって言ったろ?たとえそれが村山のじゃなくても、再び茂みに戻すわけにはいかないじゃん」 「あっ、そっか。それで、翔ちゃんが見つけた赤い髪留めをウサギの頭に置いたんだね」
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