忘れたい記憶

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『禁断の果実』 それを手にすることができないこと、手にすべきではないこと、あるいは欲しいと思っても手にすることは禁じられていることを知ることにより、かえって魅力が増し、欲望の対象になるもののことをいう―――――。 *** 近くのコンビニまで十キロ、近くのスーパーまで六キロと、とんでもない田舎で暮らして十五年。 家族とご近所さん、学校の仲間たちくらいしか顔を知らない一颯が、この田舎町を離れた理由は一つ―――――。 立季( たつき)から離れたかった―――――。 双子の立季と一颯は、顔も性格も全然違う。 よく双子なのにって言われるけど、双子だって色々あるらしい。 立季は明るくて社交的で、誰でもすぐに仲良くなれて立季の周りにはいつも友達がたくさんいた。 一方の一颯はそんな立季の少し後ろに立って、立季の服の裾を握りしめながら眺めていた。 一颯もそれなりに人と話をするし、それなりに友達もそこそこにはいる。 だが立季にはどうしたって敵わない。 ほんの少し、早く母親のお腹から出てきただけなのに……。 『一颯( いぶき)?キスしていい?』 あの頃の一颯には立季の考えている事なんて分からなくて、言葉の意味を理解しようとは思わなかった。 『一颯、触り合いっこしよ?』 あの日あの時、教室で二人きりにならなければ、僕は立季と一緒に田舎の高校に通っていたかもしれない。 この小さな町から―――――立季から逃げるように一颯は、全寮制の男子高校を選んだ。 男子高を選んだのは、女子のあのキャピキャピした感じが苦手だという事も一つの理由。 一颯が家を出る日、立季はいなかった。 いなくてよかったと正直思った。 教室での出来事から、二人は度々そう言う事をしてきた。 ダメだってわかっていても、止められなくて立季の言われるがまま、されるがままだけどいつの間にか夢中になってキスをしたり、互いのモノを触り合ったりした―――――。 『ずっと一緒にいよ?そうすれば、こう言う事もっとたくさん出来るから。』 一颯はその言い分を無視した。 初めて立季の言葉にそむいたんだ。 きっと立季は怒ってるんだ。 だから見送りもなかったのかもしれない。
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