5人が本棚に入れています
本棚に追加
国を喪い逃走を続けていたエルフの騎士団長ミリアリアと目覚めた魔王アイリス、異色の組み合わせとも言うべき2人は互いの名を名乗り合った後も言葉を交わし続けていた。
「……国の滅亡ねえ、立ち入った事を聞いてしまうけど、何があったの?魔物にでも襲撃されちゃったの?」
石棺から起き出したアイリスは身体を解す為に大きく身体を伸ばしながらミリアリアに問いかけ、ミリアリアは顔をしかめつつ口を開く。
「我がヴァイスブルク伯国を滅ぼしたのはロジナ候国だ、我が国が所属していた神聖ラインラント君主連邦帝国の有力構成国の七選帝候国の一つだ」
「あらあら、同胞に襲いかかるなんて、魔物より質の悪い連中ね」
ミリアリアの答えを聞いたアイリスは呆れた様な笑みと共に呟き、ミリアリアは小さく肩を竦めながら言葉を続けた。
「もともとロジナ候国は極端なまでの人間至上主義を国是とする国で獣人の国で同じ七選帝候国の一員でもあるレーヴェ候国やエルフの国である我が国等の亜人族の国の存在を煙たがっていたからな、我々としても決して無警戒だった訳では無かったのだがまさか問答無用で攻撃してくるとは思わなかった……と言うのは敗者の詭弁だな」
ミリアリアはそう言うと石棺の置かれている台の端に腰を降ろし、アイリスはその傍らに歩を進めながら口を開いた。
「そして、貴女の国は滅ぼされ、貴女は逃走の最中にあたしの眠る洞窟に迷い込み、そしてあたしを眠りから解き放った」
「……寝所を荒らし、貴女の眠りを妨げてしまった事については、侘びのしようも無い」
アイリスの言葉を受けたミリアリアは表情を曇らせながら返答し、アイリスはミリアリアの隣に腰を降ろすと愉快そうに笑いつつ言葉を続ける。
「本当に貴女は面白いわね、意図せず魔王を目覚めさせてしまったのなら、普通は目覚めたあたしを問答無用で攻撃してくる筈なのに、そんな事をせず逆に謝ってくるなんて、魔王に謝ったりしたら危険じゃないの?」
「確かに危険かも知れないな、魔王にそんな事をすればそのままつけこまれ取り込まれるかも知れない、だが、今の私は国を喪いさ迷う敗残兵に過ぎない、今何らかの僥倖で貴女から逃れ得たとしても敵が貴女からロジナ候国軍の残党狩に代わるだけの話だ、ならば貴女に方が遥かにマシだ、愚かな墓荒らしに鉄槌を下す代わりに、愚かな墓荒らしの言い分に耳を傾けてくれている貴女の方がな」
最初のコメントを投稿しよう!