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統司たち三人は、どんどん奥へと進んでいく。途中、何体かのミステイカーに襲われはしたものの、統司と鎌田の二人が難なく倒していき、ついには草木が生い茂るジャングルを抜けたかのように拓けた場所に着いた。
「変な所に出たなぁ。ジャングルを抜けたと思ったけど違うみてぇだな。どの方角見ても茂みだらけだもんな」
「ココだけまるで隔離されたみたいよねん。どの方向から来ても終着点はココだったような気がするわん」
サラサラと風が吹き、生い茂る草木が揺れる。
三人が息をつこうと気を緩めた瞬間、大きな咆哮が響き、空気が一変した。
「何だ今のは?ミステイカーの奇声とは少し違ったな」
「きっと覇王が言ってたフェイリアーってやつねん。アタシが倒してやるわよん」
敵がどこから来てもいいように、背中を向けあい身構える三人。
ザッ、ザッ、と土を踏む音が敵の接近を知らせる。
どんな怪物が出るのかと緊張感に包まれる中、出て来たのは普通の人間だったように見えた。
そう、『見えた』だけである。見た目は自分達と何ら変わらぬ人間だが、その両手には首を掴まれ、引きずられる死体があった。今回の模擬試験に参加していた新入生であることは明白だ。
誰だ?と統司が尋ねようとした瞬間、驚いたことに向こうから話しかけてきた。
「ダレダ、キサマラハ」
かろうじて聞き取れる程度だが、確かに自分達と同じ言語を使っている。しかし声は人間のソレとは言い難く、獣のような声だった。
「俺は結城統司。模擬試験の参加者だ。そういうオマエは誰だ?」
「オレハ、フェイリアーダ。キサマラヲ、コロス。ゴウカクシャ、ニクイ。シネ」
フェイリアーと名乗った男は右足にグっと力を入れて飛びかかってきた。統司達のいる場所とは軽く見積もっても10メートルはあったであろう距離を、たった一度の跳躍で詰めてきたのだ。
フェイリアーが右手を大きく振りかぶり、ビンタをするかのようになぎ払う。
統司は軽く後ろにステップを踏んで躱したが、ゼロと鎌田は同時にフェイリアーの攻撃をくらい、吹っ飛ばされた。
「なんていうパワーなの……。ゼロちゃん、油断しないでいくわよ!」
「……」
「ちょっとゼロちゃん!しっかりなさい!一撃ノックアウトなんて恥ずかしいわよ!」
しかしゼロはうつ伏せに倒れたまま動かない。
「仕方ない、アタシがやるわよ」
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