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「蓮兄?」
物思いに耽っていた蓮は、弟の呼び声にはっと現実に引き戻され、隣に腰を下ろしている由紀に視線を向けた。
「どうしたの?由紀。」
穏やかな笑みを浮かべて弟を見つめると、由紀が少し不機嫌そうに呟いた。
「だから、お祭りに行こうって…」
由紀が頬を膨らませて蓮を軽く睨む。
あぁ、そんな約束をしたな…と蓮は記憶を手繰り寄せる。
『蓮兄とりんご飴食べて、金魚すくいして…氷菓子も食べなきゃ!』
うん。と返事をした後の由紀の嬉しそうな顔が忘れられない。
向日葵の様に輝いていて温かい。
蓮の好きな顔。
可愛い弟。
無垢で…何も知らない義弟。
否、何も知らなくていい由紀。
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