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「それじゃあ、これから行こうか。」
蓮に約束を忘れられていた…としょげていた由紀は、蓮からの誘いにぱぁっと表情を明るくした。
「今から!?ホントに?」
目は口ほどに物を言うということはまさにこの事で、由紀の瞳は期待に満ち満ちていた。
蓮は思わず吹き出しそうなったが、
「由紀に嘘はつかない。日も落ちて来たし、今から行くとちょうどいいしね。」
見つめる由紀の頭に右手を乗せてそっと撫でてやる。
由紀は照れくさそうに笑って
「蓮兄とお出掛けで、しかも祭り!早く行こっ!」
撫でる手が離れるとすぐに立ち上がって、今度は由紀が蓮の手を取る。
「慌てすぎだよ、由紀。」
蓮も由紀につられて立ち上がると、見下ろした由紀と目があった。
蓮を見つめる瞳がきらきらと輝いている。
その黒曜石のような黒い瞳の中に映し出された自分を見つけてーーー。
「…由紀には敵わないな。」
そう呟いたのだった。
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