きっかけ。

3/3
前へ
/24ページ
次へ
「それじゃあ、これから行こうか。」 蓮に約束を忘れられていた…としょげていた由紀は、蓮からの誘いにぱぁっと表情を明るくした。 「今から!?ホントに?」 目は口ほどに物を言うということはまさにこの事で、由紀の瞳は期待に満ち満ちていた。 蓮は思わず吹き出しそうなったが、 「由紀に嘘はつかない。日も落ちて来たし、今から行くとちょうどいいしね。」 見つめる由紀の頭に右手を乗せてそっと撫でてやる。 由紀は照れくさそうに笑って 「蓮兄とお出掛けで、しかも祭り!早く行こっ!」 撫でる手が離れるとすぐに立ち上がって、今度は由紀が蓮の手を取る。 「慌てすぎだよ、由紀。」 蓮も由紀につられて立ち上がると、見下ろした由紀と目があった。 蓮を見つめる瞳がきらきらと輝いている。 その黒曜石のような黒い瞳の中に映し出された自分を見つけてーーー。 「…由紀には敵わないな。」 そう呟いたのだった。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加