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4月、新学期の全校朝礼の檀上で、校長先生の挨拶が始まった。
いつの時代も校長先生の挨拶は長いなぁ、と思う。
不意に出そうになるあくびをかみ殺して、教員席で真っ直ぐに背を伸ばして、登壇の時を待つ。
最初が肝心とは思うけれど、何分、この3月に大学を卒業したほやほやの新米高校教師だ。
生徒の前に立つのは、教育実習以来。
しかも、新卒なのに担任を任された。
ここの校長先生、結構なチャレンジャーだ。
右も左もわからぬヒヨッコに担任、しかも進学クラス。
ああ、保護者会での保護者の皆様の反応が怖い。
こんな新米のしかも小娘に大切なお嬢様、お坊ちゃまをお任せするのだから、不安と不安と不安しかないだろう。
「それでは、本年度より赴任された先生方をご紹介いたします。」
副校長先生のアナウンスに、ばね仕掛けのようにぴしりと立ち上がった。
多分、右手と右足は同時に出ていないと思う。
校長先生が名前を呼ぶと一歩出て、名前を言ってお辞儀をする。
全て、段取り通り。
少々お辞儀が勢いつきすぎたかもしれないけれど、まあ、気がつく人はそうそういないと思うことにしよう。
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