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そんなことよりも、このあとのクラスHR(ホームルーム)が問題だ。
自己紹介は多分、今日一度切り。
自分のクラスの生徒の名前と顔も覚えなければならない。
校長先生は『おいおい覚えて行けばいいんですよ。』なんて言うけれど、それすらも十分プレッシャーになる新卒だ。
ふと視線を感じて、生徒たちの群れに目を向けた。
一人だけ真っ直ぐに見つめる男子生徒がいる。
背の高い、3年生。
隣の生徒に小突かれて、視線が逸れた。
そしてそのまま、こちらに目が向くことはなかった。
気のせいかな―
緊張してるから、生徒たちの反応に過敏になっているのかもしれない。
私はすぐにまた、意識を朝礼に戻した。
そして、緊張の一日が終わり、生徒たちが下校して、職員室へ戻ろうと渡り廊下を渡り、その角を曲がると―
目の前にいきなり腕が伸びてきて、大きく壁について行く手を阻んだ。
「壁ドン…?」
目の前を遮る腕から視線を上の方へ向けると、そこには長身のイケメンがいた。
「久しぶり、絵理ネェ…」
「はい?」
「忘れんなよって言ったよな?」
頭上からする声は少し低い。
忘れんなよ―
記憶の中の声は、もう少し高い。
そして、もっと低いところで聞いていたはずだ。
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