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大人達は、血相を変え、海へ向かった。
その日は、高潮と満潮か重なったという、最悪の日だったらしい。さっきまで自分のいた場所は…海水で満たされ、当然、入ることはできなかった。
翌日、侑人は戻ってきた。
…無言の帰宅だった。
生まれた時から…気づいた時には…すぐ近くに侑人はいた。
なのに、これから先、私は独り。
だから、思った。人の命を救う人間になる、と。
だけど、世の中そう簡単に、人生の歯車は噛み合わないように出来ているんだ…。医者になるには程遠い、自分の学力の限界。だから、看護師しか道はなかった。自分の精いっぱいの努力と、償いの念。
小児科で、子供達と触れ合い、時に助けることが、侑人への償い。
…そう自分に無理矢理言い聞かせているから。
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