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1.麻薬
痛い
やめて
ごめんなさい
頭を両手で守り、泣き叫ぶ私
そんな私を見下ろす冷たい目、振り下ろされる手足に、果たして愛はあるのか。
もう嫌だ、助けて...逃げたい...
そんなSOSは、虚しくも心の中で静かに消えていった。
数時間前、私たちは二人で楽しくショッピングモールでデートをしていた。
ゆうやはまだ、普通の人間の顔をしている。
楽しい時は無邪気に笑い、私を笑わせようとふざけて見せることもある。
人とぶつかりそうになった私の体を自分の方へ引き寄せてくれたり、時には豪華なプレゼントまで用意してくれるような、そんな優しい、自慢の彼氏なのだ。
周りから見れば、きっと平凡で幸せそうなカップルだろう。
しかし私の心の中は、例え楽しいデート中でも、いつも緊張でいっぱいだった。
何故なら、少しの失敗も許されないから。
「これ、瑠菜に似合うんじゃない??買ってあげようか?」
そんな私の気持ちも知らずに、ゆうやはそう言って、私に微笑みかける。
「えっ、そんな、申し訳ないよ。この間服、買ってもらったばかりだし...」
そんな普通の会話をしていたのも束の間、私の心臓はドクンと大きく音をたてた。
どうしようどうしようどうしよう。
逃げなければ
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