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「ロンド」
「はーい」
まのぬけた返事をするロンドを、ワレスはいきなり抱きよせた。
「な、な、な——? な?」
変な挙動をするロンドのフードをめくって、さっきクルウにされたようなキスをしてやる。
すると、ジタバタしていたロンドが、ピタリと動かなくなった。
こういう無気味な男だから、舌のさきが二つに割れていたらどうしようと、内心、思っていたが、口のなかはあたりまえの人間だった。
「もういいか」
つきはなすと、ロンドはへたりこんで、おほおほ笑う。
「もう死んでもかまいませーん!」
「勘違いするな。これは礼の前渡しだ。これから頼みごとをする」
「おほほ。いいんですよ。遠慮しなくても。いつでもベッドに呼んでくださいィ……」
「調子にのるな」
ぽかりとやると、ロンドの両目から涙がこぼれる。
泣くほど嬉しかったのだろうか?
いや、それとも痛かったのか……?
「どうもよくわからないヤツだ。まあいい。おまえには、これを調べてもらいたい」
大事に布にくるんで、ふところに入れていたものをとりだす。ワレスはそれをロンドに渡した。
「昨日、例の化け物が残したものだ。ホルズの首にまきついたやつをおれが切ったので、ひからびてしまったが」
とたんに、ロンドは泣きやんだ。むすっとする。
「なんだ。お腹のところがゴツゴツすると思ったら、これですか。わたくしはてっきり、あなたがわたくしを欲していらっしゃるのだと——」
「おぞましいことを言うな!」
みなまで言わせずに、ワレスは再度、ロンドの頭を平手ではたく。
ロンドは床に文字を書いて、すねた。
ワレスは身ぶるいしながら、
「それが、どんな生き物の組成か調べろ。白くて長い……蛇かミミズのようなものだった。組成がわかれば、正体の目星がつく」
言いながら、少しずつあとずさり、去っていく。
「ああーん。そんなにすぐ行ってしまわなくてもぉ……」
ロンドの声をふりきるようにして、ワレスは文書室を逃げだした。あっちでも、こっちでも逃げだしている気がする。
(やっぱり、ロンドは尋常な人間のつもりで接すると、大変なめにあうな。用心しないと)
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