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二階へおりて、ようやく自分でコルトの部屋を探すことができた。
コルトは在室していた。
ただし、夜勤のコルトたちの隊は、まだ就寝時間だった。同室者たちも、起こすのがかわいそうなくらい熟睡している。
一つだけカラのベッドが、コルトの亡くなった友人の使っていた場所だろう。正規兵は一定期間、国内で訓練を受けてから配属される。てきとうな兵士がいなければ、補充がまにあわない。
コルトにとって、目の前で死んだ友人のベッドがいつまでもあいているのは、酷なことに違いなかった。
考えながらながめていると、ムニャムニャ言いながら一人の兵士が薄目をあけた。ワレスの小隊長の緑色のマントを見て、とびあがって敬礼する。
「お呼びでありますか! サムウェイ小隊長!」
その声に、連鎖反応のように他の兵士たちも起きてくる。
「失礼いたしました!」
「小隊長! ご命令を」
かえって、ワレスのほうがすくんだ。
「おれはサムウェイ小隊長ではない。眠っているところを起こして、すまん。コルトに用がある」
なぐられるとでも思っていたのか、兵士たちは敬礼したまま、ぽかんと口をあけた。
とまどう彼らのなかに、コルトを発見する。
「コルト」
「はいッ。ワレス小隊長。おはようございます!」
「そんな大声、出さなくていい。ユージイという男を知っているか? おまえと同じ小隊らしいんだが」
「はッ……とおっしゃいますと、やはり、あの件でしょうか?」
「そうだ」
「案内いたします」
大あわてで三段ベッドのハシゴをおり、大あわてでサンダルをはく。
「少しは落ちつけ。ベッドからころげおちてケガでもされては困る。ゆっくりしてくれ」
ワレスが言うと、いよいよ、兵士たちの顔は珍妙になる。
ワレスは首をかしげながら部屋を出た。
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